相続分の譲渡-他の相続人や第三者に譲るとどうなる?-


ウサラ

お姉ちゃんが「自分の相続分を譲る」って言い出したんだ。
相続放棄と同じことなのかな?

にゃソラ

相続放棄とは違うよ。
相続分の譲渡は、いったん相続人になった人が、その権利を他の人に渡すことなんだ。

ウサラ

じゃあ譲られた人が代わりに遺産分割に参加するってこと?
なんかややこしいね。

にゃソラ

順番に説明するよ。

 相続人は、他の相続人や第三者に相続分を譲渡することができます。相続分の譲渡について説明します。

 相続開始後、遺産分割終了前に行われる積極財産・消極財産を包含した遺産全体に対する割合的な持分の譲渡を相続分の譲渡といいます。

 相続分の譲渡は、当事者間の合意のみで成立します。譲渡される相続分は、具体的相続分です。

にゃソラ

具体的相続分については、以下の記事参照

相続分-法定相続分・指定相続分・具体的相続分-

法定相続分・指定相続分・具体的相続分の違いを解説します。

 相続分の譲渡は、相続人に対しても相続人以外の第三者に対しても行うことができます。

 相続人に対して相続分の譲渡が行われる場合は、実質的に、相続放棄・遺産分割と似た効果となります。

 相続分の譲渡は、遺産分割終了前に行う必要があります。特に、手続きが決められていません。当事者間の合意(契約)によって成立します。合意は、口頭でもかまいません。

 相続分の一部を譲渡することもできると解されています。

 相続分を相続人以外の第三者に譲渡した場合、譲受人は譲渡された相続分について遺産分割協議に参加できます。譲受人を除外した行った遺産分割は無効です。

 相続分の全てを譲渡した相続人は、遺産分割協議に参加できません。相続分の一部を譲渡した相続人は、残りの相続分について遺産分割協議に参加できます。

 譲渡される相続分は、具体的相続です。譲受人は、特別受益・寄与分の主張や遺留分侵害額請求権を行使できます。

相続債務の扱い

 譲渡される相続分には、消極財産、つまり、相続債務も含まれます。

 債権者との関係では、免責的債務引受となります。債権者の承諾がなければ、相続分を譲渡した相続人は、債務者のままです。つまり、相続債務を支払う義務を負います。

 相続分の譲渡について、以下の点に注意する必要があります。

相続債務の支払義務は残る

 相続分の譲渡により、相続債務も譲受人に譲渡できます。しかし、債権者との関係では、債権者の承諾がなければ、債務者のまま支払義務が残ります。

 相続債務の支払義務を完全に免れるには、相続放棄をする必要があります。

相続人と関係の悪化

 他の相続人に相談なしに、特定の相続人や第三者に相続分を譲渡すると、不満や反感を買い関係が悪化する場合があります。

 特に、第三者に譲渡した場合、相続人以外の第三者が遺産分割協議に参加することになり、遺産分割協議が難航することがあります。

税金の問題

 相続分を無償で譲渡すると贈与税、有償で譲渡すると譲渡所得税がかかる場合があります。予め税理士に相談しておく必要があります。

手続が煩雑になる

 第三者に譲渡した場合、第三者が遺産分割協議に参加することで、遺産分割協議が難航する可能性があります。

相続分の取戻し

 相続分が第三者に譲渡された場合、他の相続人は譲渡された相続分を第三者から取り戻すことができます。

 相続分を取り戻すには、価額償還が必要なため、その資金を確保する必要があります。また、取戻すための期限が、相続分の譲渡時から1か月以内と非常に短い点も注意が必要です。

 以下のような場面では、相続分の譲渡を利用するメリットがあります。

相続分の譲渡が有効なケース

①自分の相続分を譲って遺産分割に参加させたい人がいる(内縁の配偶者等)

②遺産分割のために時間や労力をかけたくない

③相続のトラブルに巻き込まれたくない

④できるだけ早く現金がほしい

⑤相続人を少数にして遺産分割協議をやりやすくしたい

ウサラ

相続分を譲るって、簡単にできそうで意外と複雑なんだね…
あとでトラブルになる可能性もあるなんて。

にゃソラ

そうそう。書面の作り方や税金の扱いを間違えると、思わぬ負担が生じることもあるんだ。
だから、譲る前に弁護士に相談するのが安心だよ。

ウサラ

うん…まずは相談して、どんな方法がいいか決めればいいんだね。

にゃソラ

そうそう。まずはご相談くださいってことだよ。

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