使途不明金の問題-遺産分割の付随問題-


ウサラ

母の預金が減ってるの。お兄ちゃんが管理してたけど、何に使ったのか説明がなくて…

にゃソラ

それは使途不明金の典型パターンだね。相続の前後で考え方が少し変わるから、順番に整理していこう。

ウサラ

相続の前後で違うの?なんか難しそう…

にゃソラ

大丈夫。「疑うより確認する」。まずは状況を落ち着いて見ていけば、冷静に整理できるよ。

 遺産分割の付随問題で問題になることが多いのは、被相続人の預金口座から引出しがあり、その使途が不明という使途不明金です。

 遺産分割前に、被相続人の預金口座から預金が引き出され、その使途が不明なのが使途不明金の問題です。以下、相続人の一人が、被相続人の預金口座から預金を引出したことを前提に説明します。

使途不明金の例

①親の預金を長男が管理していたが、出金の説明がない

②介護費や生活費の名目で引き出されたが領収書がない

③死亡直前に大きな引き出しがある

誤解しがちな点

 被相続人の預金口座から引出しがあった場合に、すぐに、不正な引出しだと思いがちです。しかし、中には、被相続人の意思による引出しの場合があります。被相続人の介護や生活費、被相続人による贈与といった正当な支出の場合もあります。

 被相続人の預金口座から引出しがあった場合、感情的にならずに、まずは、事実関係をしっかりと確認するのが重要です。

 遺産分割の対象となるのは、遺産分割時に存在する遺産です。使途不明金は、遺産分割時に存在しないお金なので、遺産分割の対象ではありません。したがって、遺産分割の付随問題と位置付けられています。

にゃソラ

遺産分割の付随問題については、以下の記事を参照

遺産分割でよく揉める付随問題とは?

遺産分割の付随問題について解説します。

使途不明金のポイント

 使途不明金の問題のポイントは、以下のとおりです。

使途不明金のポイント

①使途不明金の有無

②相続開始前に引き出されたのか?相続開始後に引き出されたのか?

③預金を引出した人が誰か判明しているか?

④預金を引出した相続人が自分の取得分と認めるか?

⑤預金を引出した相続人以外の相続人全員が、引出された預金を遺産分割の対象にすることを合意するか?

預金の引出時期

 被相続人の預金口座から引出しがあったのが、相続開始前なのか?相続開始後なのか?によって、使途不明金の扱いが変わります。銀行の取引履歴で、預金の引出時期と金額を確認できます。

使途不明金の取扱い

 相続開始前に預金の引出しがあった場合、被相続人の意思による預金の引出しかどうかが重要です。

チェックポイント

①被相続人の意思による引出しか?

②引出した預金の使途

③金額の妥当性

被相続人のために使った場合

 引出した預金を被相続人の生活費や介護費用として使った場合は、被相続人の意思による預金の引出しなので、問題はありません。他の相続人は、返還請求できません。

 ただし、金額が大きい場合は、他の相続人の納得を得られないことがあります。領収書等で具体的な使途を確認する必要があります。

生前贈与の場合

 預金の引出しが被相続人の意思によるもので、相続人の生計の資本のための贈与であれば、特別受益の問題となります。

にゃソラ

特別受益については、以下の記事参照

特別受益

特別受益の概要を説明します。

無断引出しの場合

 被相続人の意思による引出しではなく、無断引出しの場合は、不法行為や不当利得となります。なお、無断引出しをしたからといって、直ちに不法行為にはなりせん。不法行為になるのは、被相続人の預金口座を管理していることを利用し、預金を引出した上、自分の利益のために隠匿又は領得した場合と解されています。

 被相続人から預金を引出した相続人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を相続するという形になります。金銭債権は、法定相続分に応じて当然に分割されるので、遺産分割の対象ではありません。

にゃソラ

以下の「遺産分割の対象となる財産・ならない財産」も参照

遺産分割の対象となる財産・ならない財産

相続財産の全てが遺産分割の対象となるわけではありません。遺産分割の対象となる財産・ならない財産を解説します。

 相続開始後に、被相続人の預金口座から他の相続人の同意なしに、預金が引き出された場合、預金を引出した相続人以外の相続人全員の同意があれば、引出した預金を遺産分割時に遺産として扱うことができます。

にゃソラ

遺産分割前の相続預金の払戻し制度による場合は、不当な引出しではありません。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度-口座凍結でも一部は引き出せる?-

遺産分割前の相続預金の払戻し制度について解説します。

遺産分割時に存在しているとみなすための要件

 引き出された預金を遺産分割時に遺産として扱うための要件は、以下のとおりです。

遺産分割時に存在している遺産とみなすための要件

①引き出された預金が相続開始時に被相続人の遺産であったこと

②相続人の一人又は数人が預金を引出したこと

③預金を引出した相続人以外の相続人全員が、引き出された預金を遺産分割の対象に含めることに同意していること

相続人全員の同意が得られない場合

 上記の預金を引出した相続人以外の相続人全員の同意が得られない場合は、引き出された預金を遺産分割の対象にできません。

 この場合、預金を引出した相続人に対して、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることになります。

 使途不明金があった場合、まず、①誰が預金を引出したのか?②いくら引出されたのか?を明らかにする必要があります。また、被相続人の意思によるものではないことや使途が不当であることも立証するのが望ましいです。

 立証のために、以下のような証拠が考えられます。

使途不明金の証明のための証拠

①銀行の取引履歴

②引出時の払戻請求書

③関係者の証言

④カルテ、介護記録

にゃソラ

被相続人の預金口座を管理していた相続人は、他の相続人に対して、引出しの経緯と使途を明らかにする義務を負っていると考えられます。

ウサラ

相続の前か後かで、違うんだね!知らなかった…

にゃソラ

うん。時期で法的な考え方が変わるから、整理するのが大事なんだ。

ウサラ

ちゃんと調べて、冷静に話し合うのが一番なんだね。

にゃソラ

そう。モヤモヤのままにしないことが大事。迷ったら弁護士に整理を頼めばいいさ。

ウサラ

うん、まずは相談してみようってことだね!

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