
ずっと介護してきたのに、相続の取り分は兄弟と同じなの?不公平だよ…

そう感じる人は多いよ。でも実務では「療養看護型の寄与分」は、認められるのがとても難しいんだよ…

えっ、じゃあ頑張った意味がないの?

そんなことはないよ。制度を知って正しく準備すれば、主張のチャンスはあるよ。
実務上、寄与分で問題になることが多い療養看護型の寄与分を解説します。
- 1. 療養看護型の寄与分とは?
- 2. 療養看護型の寄与分が認められる要件
- 2.1.1. 寄与分の要件
- 3. 療養看護型の場合の特別の寄与
- 3.1.1. 療養看護型の特別の寄与の要件
- 3.1. ①療養看護の必要性
- 3.2. ②特別の貢献
- 3.2.1. 配偶者の療養看護が特別の寄与と認められるかどうかの視点
- 3.3. ③無償性
- 3.4. ④継続性
- 3.5. ⑤専従性
- 4. 寄与行為によって被相続人の財産を維持したこと
- 4.1. 介護保険との関係
- 5. 療養看護型の寄与分の評価方法
- 5.1.1. 療養看護型の寄与分の評価方法
- 5.1. 裁量割合
- 6. 療養看護型の寄与分が認められにくい理由
- 6.1. 介護は通常の扶養の範囲と判断されやすい
- 6.2. 介護保険により因果関係が否定される
- 6.3. 証拠が乏しい
- 7. 療養看護型の寄与分を主張するための準備と証拠
- 7.1. 療養看護が必要であったことの証拠
- 7.1.1. 療養看護が必要であったことの証拠
- 7.2. 介護・看護の内容を証明する証拠
- 7.2.1. 介護・看護の内容の証拠
- 8. 介護に報いる方法
- 9. 療養看護型の寄与分でお悩みの方へ
療養看護型の寄与分とは?
相続人が、病気で療養中の被相続人の療養看護に従事したことで、被相続人が職業看護人を雇う費用を免れたことで、相続財産を維持した場合、寄与分として遺産分割で考慮されます。
最近は、高齢の親を介護していたことを寄与分として主張するケースが一般的です。これを介護寄与ということがあります。
療養看護型の寄与分が認められる要件
寄与分が認められる要件は、以下のとおりです。
療養看護型の場合の特別の寄与
療養看護型の寄与分が認められるには、相続人が行った介護が特別の寄与であることが必要です。介護が特別の寄与というには、親族として期待される範囲を超えるものであることが必要です。実務上、以下の具体的要件を充足するか?によって判断されます。
①療養看護の必要性
被相続人が療養看護を必要とする病状であったこと及び近親者による療養看護を必要としていたことが必要です。
たとえば、健常な被相続人に対する家事援をしていた場合は、寄与分は認められません。また、被相続人が重篤な病状であっても、完全看護の病院に入院していた場合は、寄与分は認められません。
実務上、被相続人が介護保険の要介護度2以上の状態にあることが、寄与分が認められる目安となっています。
②特別の貢献
前述のとおり、介護が特別の寄与と認められるには、親族として期待される範囲を超えるものであることが必要です。寄与者である相続人が、配偶者か他の親族か、同居の親族かどうか、同居の利益があるかどうかによって差があります。
配偶者に対する療養看護は、一般に夫婦の協力扶助義務に含まれます。特別の寄与と認められるには、以下のような点から社会通念上、配偶者による通常の看護の程度を超えることが必要です。
配偶者の療養看護が特別の寄与と認められるかどうかの視点
①看護期間
②看護内容
③要看護状態
④配偶者の年齢
③無償性
療養看護が無報酬又は無報酬に近い状態で行われたことが必要です。通常の介護報酬に比べて著しく少額の場合は、無償性の要件を満たします。
④継続性
療養看護が長期間に及んでいることが必要です。実務上は、1年以上の期間が必要とされています。
⑤専従性
療養看護の内容が片手間ではなく、かなりの負担を要することが必要です。仕事を辞めて介護に専念することまで要求していません。
寄与行為によって被相続人の財産を維持したこと
寄与分が認められるには、相続人の療養看護によって、被相続人の財産を維持したことが必要です。
療養看護型の寄与分の場合、財産が増加することは考えられません。相続人の療養看護により、職業看護人に支払う報酬等の看護費用の支出を免れたことを証明する必要があります。
したがって、相続人の療養看護によって、被相続人が精神的な慰安されただけでは、寄与分として認められません。
介護保険との関係
被相続人が介護保険による在宅サービスを受けていたり、要介護度による支給限度額を大幅に超えて介護サービスを受けている場合もあります。
介護者である相続人の負担が一定程度軽減されている場合、財産維持との因果関係が否定されるケースがあります。
療養看護型の寄与分の評価方法
療養看護型の寄与分が認められる場合の寄与分の評価方法は、以下のとおりです。
裁量割合
療養看護型の寄与分が認められる場合、介護報酬に基づく報酬相当額がそのまま寄与分として認められません。
介護報酬は介護の有資格者へ支払う報酬であって、介護者自身の報酬と異なります。また、扶養義務を負う親族と第三者では報酬額は異なります。これらを考慮し、裁量割合として調整を行います。実務上は、0.5~0.8の間で修正されています。
療養看護型の寄与分が認められにくい理由
被相続人の介護や看護を担当するのは、物理的に、被相続人の近隣に住んでいる相続人に偏ります。そのため、療養看護型の寄与分は、他の寄与分の類型に比べて、一部の相続人に発生する頻度が高いです。相続人間での療養看護の不均衡が顕在化しやすいです。
しかし、実務上、療養看護型の寄与分が認められるケースは多くありません。
介護は通常の扶養の範囲と判断されやすい
療養看護型の寄与分が認められない理由は、介護や看護が親族として期待される範囲内と判断されるからです。
実務上も、精神的な支え、家事の援助、身の回りの世話をしていたといった主張にとどまることが多いです。これらは、特別な寄与とは認められません。
介護保険により因果関係が否定される
前述のとおり、介護保険によるサービスを受けている場合、寄与行為と被相続人の財産の維持との因果関係を否定されるケースが増えています。
証拠が乏しい
療養看護型の寄与分の場合、療養看護は家庭内で行われます。したがって、相続人がどのような看護・介護を行ったのか?の客観的な証拠は存在しません。
療養看護型の寄与分を主張するための準備と証拠
療養看護型の寄与分を主張する場合、客観的な証拠で証明できるのは、①被相続人が療養看護を必要とする病状にあったことと②被相続人の財産を維持したことです。
その上で、相続人が介護・看護にどれだけ時間を費やしたか、相続人がどのような介護・看護を行ったかを具体的に主張していくことになります。
療養看護が必要であったことの証拠
被相続人が療養看護を必要とする病状であったことを証明するための証拠として、以下のようなものが考えられます。
療養看護が必要であったことの証拠
①要介護認定通知書、要介護認定資料
②診断書、カルテ
③介護サービスの利用票、介護日誌、ケアプラン、介護利用契約書、利用料明細書
介護・看護の内容を証明する証拠
相続人が行った介護・看護の内容を証明するための証拠として、以下のようなものが考えられます。
介護・看護の内容の証拠
①介護者の日記、介護記録
②当時の写真
③家計簿
④他の親族の証言
介護に報いる方法
実務上、療養看護型の寄与分が認められるケースは多くありません。被相続人の介護に従事している相続人に報いる方法としては、被相続人に遺言を書いてもらうことです。
遺言で、被相続人の指定相続分を多くするとか、遺贈するといった方法で、介護に報いることができます。なお、被相続人が遺言で、相続人に寄与分があると書いても意味はありません。

別途、遺留分や特別受益の問題になることがあります。
療養看護型の寄与分でお悩みの方へ

介護を頑張っても、寄与分として認められるのは難しいんだね…

そうなんだ…でも、制度を知っておくことで寄与分の主張を逃さずに済むよ。

そっか。じゃあまずは弁護士に相談して、自分の場合にどんな選択肢があるか聞いてみれば安心だね。

うん、まずはご相談くださいってことだよ。
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