
相続って、みんなで平等に分けるものだと思ってたのに、兄だけが生前に家を買ってもらってて…なんか不公平じゃない?

そういう時に関係してくるのが「特別受益」だよ。制度を知ると、納得できる分け方が見えてくるよ。
具体的相続分において特別受益と寄与分が考慮されます。特別受益を解説します。
- 1. 特別受益とは?
- 2. 特別受益の対象
- 2.1.1. 特別受益の対象となる生前贈与
- 2.1. 遺贈
- 2.1.1. 相続させる旨の遺言
- 2.2. 婚姻・養子縁組のための贈与
- 2.3. 生計の資本としての贈与
- 2.3.1. 特別受益となる贈与の例
- 3. 特別受益に当たらない贈与
- 3.1.1. 特別受益にならない例
- 4. 特別受益か問題になるもの
- 4.1. 高校卒業後の学費
- 4.2. 生命保険金
- 5. 特別受益があると具体的相続分はどうなる?
- 5.1.1. 具体的相続分の計算
- 5.1. 具体例①
- 5.1.1. 具体例①
- 5.2. 具体例②
- 5.2.1. 具体例②
- 5.3. 具体例③
- 5.3.1. 具体例③
- 6. 持戻し免除の意思表示
- 7. 特別受益をめぐるトラブル
- 8. 特別受益でお悩みの方へ
特別受益とは?
相続人が複数いる場合、相続人の一人が、被相続人から遺贈を受けたり、生前贈与を受けていたとします。相続に際して、遺贈や生前贈与を受けた相続人と他の相続人が同じ相続分だと、不公平な結果となります。
そこで、民法は、相続人間の公平を図るため、生前贈与の特別な受益を相続分の前渡しとして、計算上、相続財産の価額に加えて、相続分を算定します。
計算上、相続財産の価額に加える遺贈・生前贈与を「特別受益」といいます。遺贈・生前贈与を計算上、相続財産の価額に加えることを「持戻し」といいます。
特別受益の対象
特別受益の対象は、①遺贈と②以下の生前贈与です。
生前贈与は、相続財産の前渡しとみられる贈与かどうか?を基準として、特別受益かどうか?を判断します。
遺贈
遺贈とは、遺言によって被相続人の財産の全部又は一部を相続人等に贈与することです。遺贈は、目的にかかわらず、全て特別受益となります。
相続させる旨の遺言
特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言を特定財産承継遺言といいます。特定財産承継遺言は、遺産分割方法の指定とともに、遺産分割を経ずに、相続開始と同時に特定の遺産は特定の相続人に移転すると解されています。
特定財産承継遺言は、遺贈と同様に特別受益の対象となります。
婚姻・養子縁組のための贈与
婚姻・養子縁組の際の持参金や支度金は、特別受益に当たります。
生計の資本としての贈与
生計の基礎として役立つような財産の給付で、かつ、遺産の前渡しと認められる程度の高額なものが、特別受益となります。
特別受益となる贈与の例
①居住用不動産の贈与、その取得のための金銭の贈与
②営業資金の贈与
③借地権の贈与
特別受益に当たらない贈与
生計の資本としての贈与であっても、夫婦間の生活保持義務、親族間の扶養義務の範囲内と評価できる場合は、特別受益ではありません。
特別受益にならない例
①結納金、挙式費用
②新築祝い
③子どもの入学祝い
④海外旅行など遊興費のための贈与
⑤高校までの学費
特別受益か問題になるもの
特別受益に当たるか?が問題となるものをいくつか挙げておきます。
高校卒業後の学費
専門学校、大学、留学費用などの学費は、生計の資本としての贈与に当たります。ただし、被相続人の学歴、生前の資産・収入、社会的地位に照らして、学費の支出が親の子に対する扶養義務の範囲内であれば、特別受益に当たりません。
私立の医大・薬学部等の大学の入学金や授業料のように、特別に高額でない限り、子の資質や能力に応じた親の扶養義務に基づく支出と解されています。
親の扶養義務の範囲内といえない支出であっても、相続人全員がほぼ同額の受益を受けている場合は、特別受益として考慮しません。
生命保険金
相続人の一人が受取人になっている生命保険金請求権は、相続財産ではありません。

以下の「相続の対象となる財産・ならない財産」も参照
保険金請求権は、保険契約に基づいて発生するもので、遺贈・贈与ではありません。したがって、特別受益の対象ではありません。しかし、保険料を被相続人が支払っていた場合、相続人の一人が被相続人の保険料の支払の結果として、保険金を取得するのは、相続人間の公平から問題です。
判例は、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生じる不公平が特別受益の趣旨に照らして、到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合は、特別受益に準じて持ち戻しの対象となるとしています(最高裁平成16年10月29日決定)。
特別受益があると具体的相続分はどうなる?
特別受益がある場合、遺産分割における具体的相続分は、以下のように計算します。
具体例①
具体例①
被相続人Xが死亡、相続人は妻のAと子のB・Cの3人
Bは生前、Xから1,000万円の贈与を受けている。
相続開始時の財産は3,000万円
①みなし相続財産:4,000万円(3,000万円+1,000万円)
②一応の相続分:Aは2,000万円(4,000万円×2分の1)、B・Cは1,000万円(4,000万円×4分の1)
③具体的相続分:Aは2,000万円、Cは1,000万円、Bは0(1,000万円-1,000万円)
具体例②
具体例②
被相続人Yが死亡、相続人は妻Dと子のE・F
Yは遺言でFに1,000万円を遺贈した。
相続開始時の財産は5,000万円
①みなし相続財産:5,000万円

遺贈は持ち戻しの対象ですが、相続財産に加算はしません。
②一応の相続分:Dは2,500万円(5,000万円×2分の1)、E・Fは1,250万円(5,000万円×4分の1)
③具体的相続分:Dは2,500万円、Eは1,250万円、Fは250万円(1,250万円-1,000万円)
具体例③
具体例③
被相続人Zが死亡、相続人は妻Gと子のH・Iの3人
Hは生前、Zから3,000万円の贈与を受けた。Zは遺言でIに1,000を遺贈した。
相続開始時の財産は6,000万円
①みなし相続財産:9,000万円(6,000万円+3,000万円)
②一応の相続分:Gは4,500万円(9,000万円×2分の1)、H・Iは2,250万円(9,000万円×4分の1)
③具体的相続分:Gは4,500万円、Hは0円(2,250万円-3,000万円=-750万円)、Iは1,250万円(2,250万円-1,000万円)

Hの超過特別受益の750万円をどのように負担するか?が問題になります。
実務上は、超過特別受益者以外の相続人が、具体的相続分で負担する方法によることが多いです。
④具体的相続分率:G:H:I=18:0:5
⑤具体的取得分(最終取得分):Gは3,913万円(5,000×23分の18)、Hは0、Iは1,086万円(5,000万円×23分の5)

Iは別途、遺贈の1,000万円を取得します。
持戻し免除の意思表示
被相続人は、特別受益の持戻しの免除をすることができます。被相続人が、相続開始時までに、特別受益を遺産分割において持戻す必要がないことを明示又は黙示で意思表示すれば、持戻し計算をする必要はありません。
持戻し免除の意思表示に特別な方式はありません。遺言によって持戻し免除の意思表示をすることもできます。
特別受益をめぐるトラブル
特別受益の持ち戻しの計算は、相続人が特別受益を有する相続人に対して持戻しの主張をすることで行われます。相続人同士で、特別受益に当たる・当たらないと争いになりやすいです。
特別受益を認めてもらうには、証拠が必要です。遺贈と特定財産承継遺言は、遺言書が証拠になります。したがって、証拠の確保に問題になることはありません。生前贈与の場合は、証拠の確保が問題になります。特に、金銭の贈与の場合、金融機関の取引履歴が証拠となります。しかし、10年以上前の取引履歴の開示を受けれないことが多いです。
持戻し免除の意思表示があったかどうか?で争いになることもあります。持戻し免除があまり知られていないため、黙示の意思表示があったかどうか?が問題になります。
特別受益の主張をしたい場合、特別受益の主張をされた場合は、弁護士に相談するのをお勧めします。
特別受益でお悩みの方へ

なるほど、兄がもらってた援助が特別受益になるかどうかが大事なんだね。

そう。ケースによって判断が分かれるから、迷ったら弁護士に聞いてみるのが安心だよ

気軽に相談すればいいんだね!

まずは、ご相談くださいってことだよ。
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