
お父さんから、遺留分を放棄してほしいって言われちゃって…。断るのも気まずいし、どうしたらいいのかな?

遺留分を放棄してもいいか、よく考えてね。
あと、遺留分の放棄って、家庭裁判所の許可が必要な、ちょっと特別な手続なんだよ。

えっ!?裁判所の許可がいるの?

うん。遺留分の放棄をめぐって、トラブルの原因にもなることもあるからね。
相続人が相続放棄をするのと同様、遺留分権利者は遺留分を放棄することができます。
- 1. 遺留分の放棄
- 1.1.1. 遺留分を放棄するメリット
- 1.1.2. 遺留分の放棄のデメリット
- 1.1. 相続開始前の遺留分の放棄
- 1.2. 相続開始後の遺留分の放棄
- 2. 遺留分放棄の許可の申立て
- 2.1. 遺留分放棄の許可審判
- 2.1.1. 遺留分放棄の許可審判における考慮事由
- 2.1.2. 遺留分の放棄が許可されるケース
- 2.1.3. 遺留分放棄の許可が認められるケース
- 2.1.4. 遺留分の放棄が認められないケース
- 2.1.5. 遺留分の放棄が認められないケース
- 3. 遺留分放棄の注意点
- 3.1. 相続放棄ではない
- 3.2. 他の遺留分権利者の遺留分は増えない
- 3.3. 代襲相続の場合、遺留分を主張できない
- 3.3.1. 具体例
- 3.4. 遺留分侵害額請求を行使される可能性がある
- 4. 遺留分放棄を検討する際の相談の目安
- 4.1.1. 弁護士に相談するのがいいケース
- 5. 遺留分の放棄でお悩みの方へ
遺留分の放棄
遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権を行使できます。遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは、遺留分権利者の判断に委ねられています。遺留分権利者は、遺留分を放棄することもできます。
遺留分の放棄には、以下のようなメリットがあります。特に、被相続人の事業を相続人の一人が引継ぐ場合、事業を引継ぐ相続人に事業用資産を集中させることができます。
遺留分を放棄するメリット
①相続人間でのトラブルの防止
②特定の相続人に遺産を集中できる
③遺言内容の実現
遺留分の放棄には、以下のようなデメリットがあります。
遺留分の放棄のデメリット
①遺留分の放棄を撤回できない
②借金などのマイナスの財産は相続する
③相続開始前に放棄する場合の手続きが面倒
相続開始前の遺留分の放棄
遺留分の放棄を無制限に認めると、被相続人や他の相続人などから、遺留分を放棄するように強要されるおそれがあります。そこで、相続開始前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可を必要としています。
相続開始後の遺留分の放棄
相続開始後の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可なく行うことができます。共同相続人の一人に対する遺贈等がなされた場合に、遺産分割協議が成立した場合が典型です。
遺留分放棄の許可の申立て
遺留分放棄の許可の申立ては、被相続人になる人の住所地の家庭裁判所に行います。
遺留分放棄の許可審判
家庭裁判所は、以下のような事情を考慮し、遺留分の放棄が相当と認める場合は、許可の審判をします。
遺留分放棄の許可審判における考慮事由
①遺留分権利者の意思によるか?
②遺留分放棄の理由の合理性、必要性
③遺留分放棄と引換えの代償の有無
遺留分の放棄が許可されるケース
遺留分放棄が許可されるケースとして、以下のようなものがあります。
遺留分放棄の許可が認められるケース
①相続開始後の遺産分割における紛争を防止するため、婚外子に財産を渡して遺留分を放棄させるケース
②介護や扶養のために親と同居する子以外の相続人が遺留分を放棄するケース
遺留分の放棄が認められないケース
遺留分の放棄が認められないケースとして、以下のようなものがあります。
遺留分の放棄が認められないケース
①特別な事情がないのに、複数の子の内の一人が遺留分を放棄する
②遺留分を放棄する子に十分な見返りがない
遺留分放棄の注意点
遺留分の放棄をする際は、以下の点に注意が必要です。
相続放棄ではない
遺留分を放棄しても、相続人としての地位は失いません。したがって、分割する遺産があれば、遺産分割協議に参加できます。
被相続人に借金等のマイナスの財産がある場合は、負債を引継ぐことになります。負債を引き継ぎたくない場合は、相続放棄が必要です。

相続放棄については、以下の記事参照
他の遺留分権利者の遺留分は増えない
遺留分権利者の一人が遺留分を放棄しても、他の遺留分権利者の遺留分は増えません。
代襲相続の場合、遺留分を主張できない
遺留分権利者が遺留分を放棄した後に亡くなって、代襲相続が生じた場合、もはや、代襲相続人は、遺留分を主張できません。
具体例
被相続人X、相続人は、配偶者A、子BとC
BがXの相続開始前に遺留分を放棄した。その後、BはXより先に亡くなった。Bには子のDがいる。
全財産をCに相続させる旨の遺言あり
Bの子であるDは、Bの代わりにXの相続人となります。しかし、Bが遺留分を放棄しているので、Dは遺留分侵害額請求権を行使できません。
遺留分侵害額請求を行使される可能性がある
遺留分を放棄したにもかかわらず、他の遺留分権利者から遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
相続開始前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所は、遺留分を放棄する代償として財産をもらったか?を考慮します。そのように、遺留分を放棄するに当たって、代償として財産の贈与を受けた場合、通常、特別受益に該当します。
したがって、他の相続人から遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。

遺留分侵害の対象となる贈与については、以下の「遺留分算定の基礎財産」を参照
遺留分放棄を検討する際の相談の目安
遺留分の放棄を検討する際、以下のような場合は、弁護士に相談し、遺留分放棄の可否・リスク・見返りの扱いを確認するのが安心です。
弁護士に相談するのがいいケース
①遺留分の放棄を頼まれた場合
②遺言の内容が不公平だと感じた場合
③遺留分の放棄をしてトラブルを避けたいが、不安な場合
遺留分の放棄でお悩みの方へ

遺留分の放棄って、家庭裁判所の許可までいるんだね。

そうそう。ちゃんと手続すれば、家族の思いを尊重しながらトラブルを防げるんだ。

そっか…!じゃあ、どうするのが一番いいかは、弁護士に相談して決めたほうが安心だね。

うん。まずは、ご相談くださいってことだよ。
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