相続した実家をどうする?住む・売る・貸す・共有する前に考えること


ウサラ

親が住んでいた実家を相続することになったんだけど、住む予定はないし、売るのもなんだか気が引けるし、どう考えたらいいのか分からないんだ…

にゃソラ

実家は、ただの不動産じゃないからね。思い出もあるし、すぐに「売る」・「残す」って割り切れないのは自然だよ。

ウサラ

兄弟で共有にして、とりあえずそのまま置いておくのはダメかな?

にゃソラ

「とりあえず」が後で大きなトラブルになることもあるよ。実家をどうするかは、住む・売る・貸す・共有する前に、名義、管理費、税金、家の状態、家族の意向を整理して考えることが大切なんだ。

ウサラ

気持ちだけじゃなくて、現実的な負担も見ないといけないんだね。

にゃソラ

うん。大事なのは、思い出を否定することじゃなくて、実家をどう扱えば家族にとって無理がないかを考えることだよ。

 実家を相続することになったとき、すぐに「売る」「貸す」「誰かが住む」と決められるとは限りません。

 長年暮らしていた実家には、思い出があります。売却することに抵抗を感じたり、兄弟姉妹で意見が分かれたりすることもあります。

 一方で、実家を空き家のまま放置していると、固定資産税、管理費、修繕費、近隣トラブル、相続登記、将来の売却や共有の問題など、さまざまな負担が生じることがあります。

 この記事では、相続した実家をどうするか迷っている方に向けて、住む・売る・貸す・共有する前に確認しておきたいポイントを解説します。

目次

 実家を相続した場合、相続する段階ですでに方向性が決まっている場合もあれば、まだ決まっていない場合もあります。方向性が決まっていない場合、すぐに実家をどうするか?を慌てて決める必要はありませんが、何もせずに放置し続けるのは危険です。

実家は感情と現実が重なりやすい財産

 実家は、預金や株式とは違い、思い出や家族関係が絡む財産です。「売るのは親に申し訳ない」と感じる人もいて、実家をどうするか?の判断を先送りしがちです。

 しかし、不動産は持っているだけで維持費・管理に伴う責任が発生します。

空き家のままにすると管理・税金・近隣トラブルの問題が出てくる

 実家を相続した後、空き家のまま放置するのは、以下のような様々なリスクがあります。後々、トラブルに発展する可能性があります。

空き家のまま放置することによるリスク

  • 雨漏り・老朽化
  • 草木の管理
  • 不法侵入
  • 台風や地震で外壁・屋根が飛ぶリスク
  • 固定資産税などの税金
  • 相続登記

 実家を相続した場合、名義変更と適切な管理・売却をすることが求められます。

「とりあえず共有」は問題の先送りになりやすい

 実家を相続する際に、兄弟姉妹で共有にすると、一見公平に思えます。しかし、後に、実家を売却・賃貸・大規模修繕する場合に、意見が対立することがあります。

 また、共有者が亡くなると、その持分がさらに相続され共有者が増えます。その結果、将来、連絡が取れない共有者が出ると処分が難しくなるという弊害が出てきます。

誰が相続人になるのか?遺言書はあるのか?

 実家の相続に限りませんが、相続の基本中の基本です。

 相続人が誰か?遺言書があるか?を確認することが、相続手続きのスタートです。

 遺言書がある場合、遺言書が有効であれば、遺言書の内容に従います。遺言書がない又は遺言書が無効の場合は、遺産分割が必要になります。

実家の名義と相続登記を確認する

 実家を相続する場合、必ず登記事項証明書を確認しましょう。実家が何代も相続されてきた場合、登記名義が被相続人の父名義ではなく、祖父名義のままになっているケースもあります。この場合、原則、複数の登記申請が必要になります。

 固定資産税を支払っている人が、不動産の登記名義人とは限らないので注意が必要です。

家の状態を確認する

 実家を相続する場合、実家の状態を確認しておくことが重要です。実家の状態によって、実家をどうするか?の判断も変わってきます。

実家について確認すべき事項

  • 築年数
  • 耐震性
  • 雨漏り、シロアリの被害
  • 水回りの状態
  • 境界
  • 接道、再建築の可否
  • 家財・遺品の量

 実家を解体する必要があるのか?リフォームすれば住めるのか?を見極める必要があります。その上で、売却する場合は、古家付き土地か、更地かを選択することになります。

実家の維持費を確認する

 実家を所有する場合の維持費についても確認しておく必要があります。

主な維持費

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険・地震保険
  • 草刈り・庭木の剪定
  • 空き家管理サービス
  • 修繕費、リフォーム費用
  • 実家への交通費

 実家を売却する場合は、解体費用や家財処分費用なども確認する必要があります。

実家に関する税金を確認する

 実家を相続した場合は、その後、住む・売る・貸すいずれの選択をしても、税金が関係してきます。税理士に相談の上、税金がどれくらいかかるのか?を確認しておくことが必要です。

主な税金

①相続税

②固定資産税・都市計画税

③売却時の譲渡所得税

④空き家の3,000万円特別控除

⑤貸す場合の不動産所得

⑥小規模宅地等の特例の適用の可否

他の相続人の意向を確認する

 実家を相続する場合、他の相続人の意向を確認することも重要です。

確認すべき相続人の意向

  • 実家に住みたい相続人はいるか?
  • 実家を残したい相続人はいるか?
  • 実家を管理する・できる相続人はいるか?
  • 実家の維持・管理の費用を誰が負担するか?
  • 実家を売るのに、反対の相続人はいるか?

 実家に住みたい相続人が実家を取得する場合、他の相続人に代償金を支払えるか?も重要なポイントです。

 実家を相続した後の選択肢は、以下の4つが考えられます。

実家を相続した後の選択肢

①住む

②売る

③貸す

④共有のまま

選択肢向いているケースメリット注意点
住む実家に住みたい相続人がいる実家を残せる
空き家化を防げる
他の相続人との公平、代償金が問題
売る実家に住みたい相続人がいない
管理できる相続人がいない
現金化して分けやすい
管理負担をなくせる
売却価格、譲渡所得税、家財処分、空き家特例の要件に注意
貸す立地がよく、賃貸需要がある実家を残しつつ収入を得られる修繕費、空室、入居者対応、不動産所得税
共有すぐに方針を決められない特になし売却・賃貸・修繕で意見が割れやすい
次の相続で複雑化する

 相続した実家に誰かが住む場合、住み慣れた実家を残すことができます。しかし、実家の維持・管理にコストがかかります。また、以下のような点も踏まえて検討する必要があります。

誰が実家を取得するのか?

 相続した実家を相続人の誰かが住む場合、誰が実家を取得するのか?を決める必要があります。小規模宅地の特例の要件を満たす人が取得するのか?も検討材料になります。

 実際に実家に住む相続人が取得するのが自然です。その後の管理や将来の売却がしやすいです。なお、被相続人の配偶者が実家に住み続ける場合は、配偶者居住権を設定することも考えられます。

代償金が問題になることがある

 実家を相続人の一人が取得する場合に、他の相続人との公平性が問題になることがあります。典型は、相続財産が実家の不動産しかないケースです。そのような場合、実家を取得する相続人が他の相続人に代償金を支払うことになります。

 実家を取得する相続人が代償金を支払うことができれば、公平性の問題はクリアできます。しかし、代償金を支払えない場合は、公平性の問題がクリアできません。

リフォーム費用・生活費も含めて考える

 相続により取得した実家は、古くなっていて、そのままでは住めないこともあります。現在は、住める状態でも近い内に、リフォームや修繕が必要になると想定されます。

 相続により財産を取得したと思っても、後々、大きな支出が必要になるのが実家の相続です。相続した実家に住む場合は、家賃や住宅ローンが不要になるというメリットだけではなく、修繕費・固定資産税・保険・交通利便性・老後の生活まで含めて考えることが重要です。

売却は管理負担を減らし、遺産分割がしやすい

 相続する実家を売却する場合、実家を維持・管理する必要がなくなります。実家の売却代金を現金で分けることができるので、遺産分割がしやすくなるというメリットがあります。

 遠方の実家や老朽化した実家で、相続人の誰も維持・管理する人がいない場合は、売却は有力な選択肢です。

相続人全員の合意が必要

 相続人の一人が実家を取得した後に売却する場合は、取得した相続人が単独で売却できます。しかし、実家を売却して、売却代金を相続人で分ける場合は、相続人全員の合意が必要です。

売却価格だけでなく、費用と税金も確認する

 相続人全員が実家の売却で合意するためには、売却価格だけではなく、売却に必要な費用や税金についても確認しておく必要があります。

売却時にかかる費用の例

  • 仲介手数料
  • 解体費用
  • 測量費用、境界確定費用
  • 家財処分費用
  • 登記費用
  • 譲渡所得税

 実家の売却価格によっては、思ってた以上に手元にお金が残らないこともあります。事前に、費用・税金について相続人全員で確認し共有しておくことが重要です。

更地にして売るか?古家付きで売るか?

 相続する実家は古くなっていることが通常です。解体して更地にしてから売却する方が売れやすいでしょう。しかし、更地にするには、当然、解体費用がかかります。

 更地にして売るのか?古家付きで売るのか?は、不動産業者に査定・相談して検討することになります。

空き家の3,000万円特別控除が使えるか?

 実家を売却する場合、空き家の3,000万円特別控除を利用できるか?を税理士に相談して確認しておくといいでしょう。この制度は、被相続人が住んでいた家を相続して売る場合、一定要件を満たすと、譲渡所得から3000万円を控除できます。つまり、税金が安くなる制度です。

空き家の3,000万円特別控除の主な要件

①被相続人が一人で住んでいた

②昭和56年5月31日以前に建築された家屋である

③相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した

④売却代金が1億円以下

⑤相続してから売却まで空き家であった

にゃソラ

詳しい要件は、税理士に確認してください。

 相続した実家を誰かに賃貸する場合、収益化しながら資産として保持できるというメリットがあります。

貸せば家賃収入になるとは限らない

 立地や築年数によって賃貸需要が異なります。通常、古い家は修繕しないと借手は現れません。したがって、相続した実家を賃貸する場合は、通常、実家の修繕・リフォームが必要になります。

 また、空室期間の発生、入居者対応が必要になる場合もあります。不動産管理会社に依頼する場合は、その費用が必要です。

貸す前に修繕費・管理費を見積もる

 相続した実家を賃貸する前に、修繕費や管理費を見積もっておくことが重要です。

実家を賃貸する際にかかる費用の例

  • 修繕・リフォーム費用
  • 火災保険
  • 管理委託費

 相続した実家を賃貸すればお金が入るのではなく、先にお金をかけないと貸せないことがほとんどです。

家賃収入は不動産所得になる

 相続した実家を賃貸したことにより得た家賃収入は、不動産所得として所得税の課税対象です。つまり、確定申告が必要になります。

空き家の3,000万円特別控除の要件に注意

 相続した実家を売却する場合、空き家の3,000万円特別控除の要件を満たせば、譲渡所得から3000万円を控除できます。

 空き家の3,000万円特別控除を利用するには、相続開始後、売却まで空き家であることが要件になります。つまり、相続した実家を賃貸すると、空き家の3,000万円特別控除は利用できなくなります。

 相続開始後3年以内に、実家を売却する予定の場合は、賃貸せずに空き家のままにしておく必要があります。

 相続した実家を相続人の共有にするのは、すぐに実家をどうするかを決める必要がないというメリットはあります。しかし、それ以上のメリットはありません。

将来の合意形成が難しくなる

 相続した実家を相続人の共有にすると、実家の使い方を決めるたびに共有者間で合意が必要になります。売る、貸す、修繕する、解体するなどで意見が分かれることがあります。

共有者の誰かが亡くなると、さらに複雑になる

 共有者の誰かが亡くなると、共有者の持分は相続されます。その結果、共有者の数が増えて、合意形成がさらに難しくなります。そうならないためにも、早めに方針を決めておく必要があります。

共有にするならルールを決めておく

 相続した実家を相続人の共有にするのであれば、共有の間、共有者間でルールを決めておくのが望ましいです。

共有にする場合に決めておきたいこと

  • 固定資産税を誰が払うか?負担をどうするか?
  • 修繕費をどう負担するか?
  • 誰が鍵を管理するか?
  • 誰が定期的に見に行くか?
  • 貸す場合の家賃の分配
  • 売る場合の最低価格

 相続人の共有のままにするのであれば、これらを文書化しておくのをおすすめします。

「誰が使うのか」を考える

 まず、考えるのは、実家を使う相続人がいるのか?です。相続人の誰かが実際に住む場合はもちろん、賃貸する場合も含みます。

 「実家を、今後3年以内に誰かが具体的に使う予定はあるか?」を考えてみましょう。

「年間いくらかかるのか」を考える

 次に考えるのは、実家を維持・管理するコストがどれくらいかかるのか?です。

主な維持費

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険・地震保険
  • 草刈り・庭木の剪定
  • 空き家管理サービス
  • 修繕費、リフォーム費用
  • 実家への交通費

 実家を残すかどうかは、持ち続けるための年間コストを見える化すると判断しやすくなります。

「10年後も同じ判断でいられるか?」を考える

 最後に、10年後のことを考えてみましょう。人も家も年を取っていきます。実家は老朽化していきます。管理する相続人は高齢化していきます。今は、管理できても10年後も同様に管理できるとは限りません。そうこうしている内に、売却時期を逃すかもしれません。

 実家を相続する場合、どうしたらいいのでしょうか?ケース別に考えてみましょう。

相続人の一人が実家に住みたいケース

 相続人の一人が実家に住みたいと希望しているケースでは、その相続人が実家を取得する方向で調整します。遺産全体を見たうえで、代償金の支払いの有無を検討します。

 実家に住みたいと希望しているのが、被相続人の配偶者の場合は、配偶者居住権を設定することも選択肢の一つです。

誰も住まないが、売る決心がつかないケース

 相続人が実家に住むことを希望していないが、売却する決心がついていないケースは、短期間の管理体制を決めておく必要があります。維持管理費用の負担についても話し合っておく必要があります。

 再度、話し合いをするために、必ず期限を区切って検討してもらうことが重要です。

売るか残すか意見が割れているケース

 相続人間で、実家を売るか?残すか?意見がまとまらないケースは、感情論で話合いをせずに、実家の評価額、維持費、管理負担を相続人間で共有するところから始めましょう。

 選択肢は、売るか?残すか?の二択ではありません。相続人の一人が取得して他の相続人に代償金を支払うことも選択肢の一つです。

実家を貸して収入を得たいケース

 実家を賃貸して家賃収入を得たいケースは、実家に借手がつくのか?賃貸需要を確認することが重要です。さらに、修繕・リフォーム費用を見積もっておくことが重要です。

 また、家賃収入と経費を試算しておくことも重要です。不動産管理会社を利用するのか?どの会社にするのか?を決める必要もあります。

実家は要らないケース

 実家を相続したくないケースは、相続放棄や相続土地国庫帰属制度の利用が考えられます。

 相続放棄は、最初から相続人ではなかったことになり、相続人の権利義務の一切を承継しません。実家だけではなく、現金・預貯金・株式など他の相続財産を取得することはできなくなります。

 相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たした土地を国に引き取ってもらう制度です。土地は更地にする必要があります。他の要件を満たすか?を確認する必要があります。

 以下のような場合は、弁護士に相談するのをおすすめします。

  • 相続人の間で意見が合わない
  • 実家の評価や代償金で揉めている
  • 共有名義にしてよいか迷っている
  • 遺産分割協議がまとまらない
ウサラ

実家って、売るか残すかだけで考えてたけど、管理費とか税金とか、共有の問題もあるんだね。

にゃソラ

そうだね。実家は思い出のある場所だけど、相続すると管理する責任も一緒に引き継ぐことになるんだ。

ウサラ

でも、すぐに答えを出せなくてもいいんだよね?

にゃソラ

もちろん。大事なのは、答えを急ぐことじゃなくて、放置しないこと。
相続人で話し合う前に、名義や維持費、家の状態を整理しておくと、冷静に考えやすくなるよ。

ウサラ

兄弟で意見が合わないときは?

にゃソラ

そのときは、無理に家族だけで抱え込まなくて大丈夫。
実家の分け方や共有のリスクを整理するために、弁護士に相談してみるといいよ。

 相続した実家をどうするかは、家族の思い出と現実的な負担の両方が関わる問題です。

 住む、売る、貸す、共有する前に、相続人の意向や名義、維持費、税金、将来の管理方法を整理しておくことが大切です。

 実家の相続や遺産分割で迷っている方は、早めに弁護士にご相談ください。

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