
お父さんがNISAをしていたみたいなんだけど、私もNISA口座を作れば、そのまま引き継げるの?

株式や投資信託は相続できるよ。ただ、NISAの非課税の扱いまで引き継げるわけではないんだ。

え!?じゃあ、お父さんが増やした分にも、今から税金がかかるの?

死亡時までの含み益には、NISAの非課税の扱いが適用されるよ。その後の利益にかかる税金と、財産を相続することにかかる相続税は、分けて考えよう。

投資はよく分からないし、早く売っておいたほうがいいのかな?

まずは何を持っていたか、誰が受け取るか、いつ現金が必要かを整理しよう。売るかどうかは、その後に考えられるよ。
親がNISA口座で保有していた株式や投資信託を相続することになっても、投資に詳しくなければ、手続きや税金の扱いに戸惑うかもしれません。NISAの非課税の扱いは相続人には引き継がれませんが、財産そのものがなくなるわけではありません。
この記事では、親のNISAを相続するときの手続き、相続税と売却時の税金、相続人同士で分ける際の注意点を解説します。相続後に売却するか保有を続けるかを考えるための資金計画の視点も紹介します。
- 1. 親のNISA口座の株式・投資信託は相続できる?
- 1.1. 財産は相続できても、NISAの非課税は引き継げない
- 1.2. 新NISAも旧NISAも、死亡時に非課税口座にあるかを確認する
- 2. 親のNISAを相続すると、運用益の税金はどうなる?
- 2.1. 死亡時までの含み益には、非課税の扱いが適用される
- 2.2. 相続後の運用益は課税対象
- 2.3. 相続後に売却した場合の税金の例
- 2.4. 親の購入額を下回っていても、売却益が出ることがある
- 3. NISAの財産にも相続税はかかる?
- 3.1. NISAの非課税と相続税は、別の仕組み
- 3.2. 売却益を計算する取得価額と、相続税評価額は違う
- 4. 親のNISAを相続する手続きは、何から始める?
- 4.1. 利用していた金融機関に連絡する
- 4.2. 何を、どの口座で、どれだけ持っていたか確認する
- 4.3. 受け取る人を決め、課税口座への移管を進める
- 5. 兄弟でNISAの財産を分けるときの注意点
- 5.1. 商品を分ける方法と、売って現金を分ける方法がある
- 5.2. 値動きがある財産は、評価と売却のルールを先に決める
- 6. 相続したNISAの財産は、売る?持ち続ける?
- 6.1. まず「いつ、いくら現金が必要か」を考える
- 6.2. 親に合っていた投資が、相続人にも合うとは限らない
- 6.3. 自分のNISAを使うなら、売却後の新たな購入になる
- 7. 家族が困らないために、生前にできる準備
- 7.1. 金融機関名と、資料の保管場所を共有する
- 7.2. 財産の渡し方と、家族が使える現金を合わせて考える
- 8. 親のNISAの相続でよくある質問
- 8.1. 投資経験がなくても相続できますか?
- 8.2. 親が株式を買ったときの金額が分かりません
- 8.3. 相続により非課税ではなくなるので、すぐ全部売る必要がありますか?
- 9. 親のNISAは、手続き・税金・資金計画を分けて整理しよう
親のNISA口座の株式・投資信託は相続できる?
株式や投資信託などの金融商品に投資した場合に、投資した株式などを売却した利益や配当金に対して20.315%の税金がかかります。
一方、NISA口座を作って株式や投資信託に投資した場合、売却した利益や配当金は非課税となります。ただし、NISA口座での投資には上限が設けられています。投資の上限は、つみたて投資枠・成長投資枠を合わせて1,800万円です。

ただし、成長投資枠の上限は1,200万円です。
財産は相続できても、NISAの非課税は引き継げない
亡くなった親がNISA口座で投資していた場合、NISA口座で投資をしていた株式や投資信託は相続の対象になります。
もっとも、親のNISA口座の名義を変更して相続人名義にしたり、相続人自身のNISA口座にそのまま移すことはできません。
相続した株式や投資信託は、相続人の特定口座または一般口座で受け入れることになります。相続人が特定口座などを持っていない場合でも、必要な課税口座を用意して相続手続きができます。
新NISAも旧NISAも、死亡時に非課税口座にあるかを確認する
2024年にNISAは、新しい制度になりました。それ以前の旧一般NISA・旧つみたてNISAについても、相続の対象になります。
旧NISAは、非課税期間終了などにより、死亡前に課税口座へ移っている場合があります。相続に際しては、NISA口座だけでなく、特定口座・一般口座も調べる必要があります。
親のNISAを相続すると、運用益の税金はどうなる?
親のNISA口座の株式や投資信託を相続した場合、それまでの運用益に対する税金はどうなるのでしょうか?
死亡時までの含み益には、非課税の扱いが適用される
NISA口座で取引していた人が亡くなると、株式や投資信託などは、NISA口座から被相続人の特定口座や一般口座に移されます。NISA口座から払い出される際、死亡時までの含み益は非課税の扱いが適用されます。
相続後の運用益は課税対象
相続後の運用益は、課税対象です。20.315%の税金がかかります。被相続人が亡くなった後、金融機関で手続きをするまでの間に非課税として支払われた配当金等があっても、遡って課税されます。手続きを遅らせても非課税を延ばせるわけではありません。
なお、相続人の取得日は、原則として被相続人が亡くなった日です。取得価額は、死亡時の時価が基準となります。上場株式では死亡日の終値、公募株式投資信託では死亡日の基準価額が基本となります。

取得価額とは、売却したときに、いくら利益が出たのかを計算するための基準となる金額です。
相続後に売却した場合の税金の例
NISA口座を相続した際の税金のイメージを以下の例で説明します。
| 時点 | 保有分全体の金額 |
|---|---|
| 親がNISAで購入したとき | 100万円 |
| 親の死亡時 | 150万円 |
| 相続人が売却したとき | 180万円 |
死亡時までの値上がり50万円には、NISAの非課税の扱いが適用されます。
遺産分割後に、相続人の売却益は、180万円-150万円=30万円です。税率20.315%で計算すると、税額の概算は60,945円となります。
なお、上記はイメージであり、相続人に同一銘柄の別の保有がなく、相続した分をすべて売却した例です。手数料、配当、損益通算などは考慮していません。
親の購入額を下回っていても、売却益が出ることがある
| 親の購入額 | 死亡時の時価 | 相続人の売却額 |
|---|---|---|
| 100万円 | 80万円 | 90万円 |
親が株式や投資信託を取得した価格よりも相続人は低い価格で売却しています。しかし、相続人が相続により株式や投資信託を取得した際の取得額は80万円です。
したがって、相続人には90万円-80万円=10万円の売却益が生じます。10万円に対して20.315%の税金がかかります。
つまり、親が買った価格に戻ったかどうかと、相続人に税務上の利益が出るかどうかは、別の問題です。
NISAの財産にも相続税はかかる?
親のNISA口座の株式や投資信託を相続した場合、相続税の対象になるのでしょうか?
NISAの非課税と相続税は、別の仕組み
NISAは、株式や投資信託の運用益等を非課税にする制度です。NISA口座で保有している株式や投資信託を、相続税の対象から外す制度ではありません。NISAの資産も他の預貯金や不動産などと合わせて相続税の課税関係を判断します。
もっとも、NISA口座の株式や投資信託などがあるから必ず相続税が発生するわけではありません。相続税の基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
たとえば、相続人が子2人の場合、相続税の基礎控除は4,200万円です。NISA口座の株式や投資信託を含む相続財産が4,200万円以下なら、相続税はかかりません。
売却益を計算する取得価額と、相続税評価額は違う
上場株式の相続税評価では、原則、以下の価格の内、最も低い価格を採用します。
上場株式の相続税評価
- 死亡日の終値
- 死亡月の終値の月平均
- 死亡前月の終値の月平均
- 死亡前々月の終値の月平均
たとえば、死亡日の終値に基づく保有分の金額が150万円でも、相続税評価額が140万円になる場合があります。
投資信託は、商品ごとに相続税評価の方法が異なります。一般的な公募株式投資信託は死亡時の解約等で受け取れる価額を基にし、ETF等の上場投資信託は上場株式に準じます。
| 金額の種類 | 何のために使う? |
|---|---|
| 売却時の取得価額 | 売却益に対する税金を計算する |
| 相続税評価額 | 相続税を計算する |
| 遺産分割の評価額 | 相続人同士で財産の分け方を考える |
親のNISAを相続する手続きは、何から始める?
利用していた金融機関に連絡する
まずは、親が利用していた証券会社・銀行に亡くなったことを連絡し、相続手続きの案内を受けることから始めます。
郵便・メールの取引報告、金融機関名が分かるアプリや資料等を手掛かりに、金融機関にあたりをつけます。
「非課税口座開設者死亡届出書」は、死亡を知った日以後、遅滞なく金融機関に提出する必要があります。
何を、どの口座で、どれだけ持っていたか確認する
- 銘柄名・銘柄コード
- 株数・口数
- NISA口座と課税口座の区分
- 死亡時の残高
- 死亡後の取引・配当等
- 相続手続きに必要な書類
などを金融機関に確認しましょう。
受け取る人を決め、課税口座への移管を進める
遺産分割協議により、株式や投資信託を取得する相続人を決めます。取得する相続人が決まったら、相続人の課税口座への移管を進めます。
課税口座への移管に必要な書類には、所定の相続書類、戸籍または法定相続情報一覧図、遺言書または遺産分割協議書等、印鑑登録証明書、本人確認資料などがあります。
金融機関によっては、他の金融機関の課税口座に移せない場合があります。その場合は、相続人が当該金融機関に課税口座を開設する必要があります。金融機関によって異なるため、必要な手続きは必ず金融機関に確認しましょう。
兄弟でNISAの財産を分けるときの注意点
NISA口座の株式や投資信託を遺産分割する際は、以下のような点に注意が必要です。
商品を分ける方法と、売って現金を分ける方法がある
| 分け方 | 確認したいこと |
|---|---|
| 株数・口数で分け、それぞれが取得する | 分割できる単位、受取口座、金融機関の条件 |
| 売却し、代金を分ける | 売却時期、担当者、費用・税金、配分方法 |
| 一人が取得し、預金等や代償金で調整する | 評価額、他の財産、代償金の資金 |
上記は、一般的な選択肢です。すべての金融機関・商品で同じ手順を選べるとは限りません。売却は相続人の口座へ移管した後に行う運用の金融機関もあります。
値動きがある財産は、評価と売却のルールを先に決める
ケース
相続人Aが預金300万円、相続人Bが時価300万円の株式を取得すると合意しました。
その後、株式の価格が250万円になった場合、同じ300万円相当の財産でも、価格変動のリスクには違いがあります。
株式を取得する相続人が、どのリスクを引き受けるかを確認しておくことが必要です。株式や投資信託は、死亡時・協議時・売却時には価額が変わります。
遺産分割協議では、以下の点についても合意しておくのが望ましいです。
- 評価基準日
- 数量
- 売却の担当・時期・権限
- 手数料や税金の負担
- 代金の配分
- 価格変動の扱い
換価目的で代表者の口座へ移す場合は、その相続人が財産を単独で取得したのか、共同相続人のために換価を行うのかを明確にしておく必要があります。遺産分割協議書・金融機関の手続き・税務上の所得帰属を整合させる必要があります。
相続したNISAの財産は、売る?持ち続ける?
相続によって取得したNISA口座の株式や投資信託は、売却した方がいいのでしょうか?それとも保有し続けた方がいいのでしょうか?
まず「いつ、いくら現金が必要か」を考える
まずは、相続した資産の総額だけでなく、必要な時期までに使える現金がいくらあるかを確認しましょう。
ケース
相続した金融資産が預金50万円・株式等450万円。
近い時期に必要な現金が合計150万円。
このケースでは、相続により取得する財産は500万円です。しかし、現金は100万円不足しています。株式等の一部を売却する場合は、税金・手数料・受渡し日数を見込み、必要な手取り額から考えましょう。
相続の際に検討すべき支出の例
相続税などの納付
代償金の支払い
相続手続きの費用
当面の生活費
住宅修繕や教育費などの予定
急な支出への備え
親に合っていた投資が、相続人にも合うとは限らない
ライフステージによって適した投資方法は異なります。親が投資している商品や投資方法が、相続人にも適しているとは限りません。
- 何のために保有するのか?→教育資金?住宅資金?老後資金?
- いつ使う予定のお金なのか?
- 値下がりしても生活に支障がないか?
- 商品の仕組みやリスクを理解できるか?
- 自分の他の資産と合わせて、偏りがないか?
などを確認しましょう。
また、外国株式や外国資産の投資信託には、価格変動に加えて為替変動の影響も受けます。
親が大切にしていた財産だからこそ、売却をためらうこともあるでしょう。ただ、親の思いを大切にすることと、同じ商品を持ち続けることは、必ずしも同じではありません。
自分のNISAを使うなら、売却後の新たな購入になる
相続した株式や投資信託を相続人のNISA口座へ直接移すことはできません。相続人のNISA口座で運用したい場合は、必要に応じて課税口座で売却し、その資金で対象商品を新たに購入することになります。
売却時の利益には課税され得るため、NISAで買い直せば過去の売却益まで非課税になるわけではありません。
新たな購入には、相続人自身の年間投資枠・非課税保有限度額が適用されます。年間投資枠は、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円です。対象商品や購入方法にも条件があります。
もっとも、非課税枠を使うことより先に、納税・代償金・生活費のための現金を確保することが大切です。
家族が困らないために、生前にできる準備
NISA口座で株式や投資信託に投資している場合、自分の死後に家族が困らないように、生前に準備をしておくといいでしょう。
金融機関名と、資料の保管場所を共有する
生前に、家族が財産の所在を把握できるように、以下の事項を整理しておくといいでしょう。
- NISAを利用している金融機関
- NISA口座と課税口座の区分
- 取引報告書などの保管場所
- 財産一覧やエンディングノート
エンディングノート等には財産の所在を残し、誰にどの財産を渡すかを決めたい場合は遺言書を作成するのがいいでしょう。
財産の渡し方と、家族が使える現金を合わせて考える
特定の相続人に商品を取得させたい希望がある場合は、遺言書を作成することになります。遺言書を作成する際には、他の財産とのバランス、他の相続人の権利、遺族の生活費や納税資金なども検討すると、相続人間の争いを防ぎやすくなります。
親のNISAの相続でよくある質問
-
投資経験がなくても相続できますか?

ウサラ 投資の経験はないけど、相続できるの?
-

にゃソラ 相続に投資経験は関係ないよ。
投資経験がなくても親のNISA口座の株式や投資信託は、相続できます。相続人のNISA口座を開設することが前提ではありません。受取りに必要な課税口座を確認し、相続手続き後に保有・売却を検討するといいでしょう。
-
親が株式を買ったときの金額が分かりません

ウサラ 親が株式を買ったときの金額が分からないんだけど?
-

にゃソラ NISA口座の株式や投資信託の取得価額は、死亡時の時価だよ。
死亡時にNISA口座にあった商品の取得価額は、原則として死亡時の時価です。親が購入した価格が不明だからといって、直ちに売却代金の5%を取得費とするという扱いではありません。まず金融機関で死亡時の口座区分と記録を確認しましょう。すでに課税口座へ移っている商品とは区別します。
-
相続により非課税ではなくなるので、すぐ全部売る必要がありますか?

ウサラ 相続したら、非課税じゃないから、すぐに全部売る必要があるの?
-

にゃソラ 非課税じゃなくなるからといって、すぐに売る必要はないよ。
親のNISA口座の非課税取引が引き継げないことだけを理由に、一律に全額売却する必要はありません。ただし、死亡の連絡・届出は早めに行い、相続人との遺産分割協議と現金の必要時期を整理しましょう。
売却する際に、必要な手続きや日数などは、金融機関に確認しましょう。
親のNISAは、手続き・税金・資金計画を分けて整理しよう
親がNISA口座で保有していた株式や投資信託は相続できます。ただし、非課税の扱いは相続人には引き継がれません。死亡時までの含み益には非課税の扱いが適用され、相続後の売却益は原則として死亡時の時価を基に計算します。一方、保有する財産は相続税の対象となるため、他の財産と合わせた確認が必要です。
まずは、金融機関に連絡し、保有商品と必要な手続きを確認しましょう。その上で、誰が受け取るか、いつ現金が必要かを整理すれば、売却するか保有を続けるかも考えやすくなります。

NISAのままは引き継げなくても、何も分からないまま急いで売らなくていいんだね。

うん。まず金融機関に連絡して、財産と手続きを確認しよう。その後で、家族での分け方と必要な現金を整理するといいよ。

兄弟と分け方でもめたり、代償金を払えるか不安だったりしたら、相談していい?

もちろん。誰が何を受け取るかを、相続後の生活も考えながら一緒に整理しよう。
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