
相続税はかからないみたい!じゃあ、相続のお金の心配はもうしなくていいんだよね?

う~ん、それはちょっと早いかな。
相続税が0円でも、戸籍を取ったり、不動産の名義を変えたりするのにはお金がかかるんだ。

えっ、相続税がかからなくても、お金はかかるの!?

そう。「相続税がかかるか」と「相続するためにお金が必要か」は別の話なんだよ。
相続税がかからない相続でも、相続手続そのものが無料になるわけではありません。特に、遺産に不動産がある場合は、相続税とは別にまとまった費用が必要になることがあります。
- 1. 相続税がかからなくても、相続には費用がかかる
- 2. 相続税がかからない2つのケース
- 2.1. 遺産が基礎控除以下なので相続税がかからない場合
- 2.2. 特例を使った結果、相続税が0円になる場合
- 3. 相続でまずかかるのが戸籍などの書類取得費用
- 3.1. 相続人を確認するために戸籍が必要
- 3.2. 法定相続情報証明制度を使う
- 4. 不動産を相続すると登録免許税がかかる
- 4.1. 相続税が0円でも登録免許税は必要
- 4.2. 相続登記を「後回し」しにくい
- 5. 専門家に依頼すれば報酬の支払いが必要
- 5.1. 司法書士
- 5.2. 税理士
- 5.3. 弁護士
- 6. 相続人同士でもめると裁判所の費用もかかる
- 7. 実家などの不動産は「相続した後」にもお金がかかる
- 7.1. 不動産を持っているだけでも費用が発生する
- 7.2. 不動産を売却するにも費用がかかる
- 8. 葬儀などのお金も必要になる
- 9. 相続税0円でも、こんな費用がかかる
- 10. 相続では「遺産の額」だけでなく「すぐ使えるお金」を確認する
- 11. 相続で費用が膨らみやすいケース
- 12. 「相続税が0円」と「相続にお金がかからない」は別
相続税がかからなくても、相続には費用がかかる
| 費用 | どんなときにかかる? |
| 葬儀費用 | 被相続人の葬儀を行った場合 |
| 戸籍などの取得費用 | 相続人の調査 預貯金・不動産などの名義変更手続 |
| 専門家への報酬 | 弁護士・司法書士・税理士などに依頼 |
| 裁判所の費用 | 遺産分割調停等の裁判手続を行った場合 |
| 登録免許税 | 不動産の相続登記 |
| 不動産の維持・処分費用 | 固定資産税、管理、片付け、売却など |
相続税がかからない2つのケース
相続税がかからない、つまり0円になるのは、2つのケースがあります。
遺産が基礎控除以下なので相続税がかからない場合
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で計算した金額です。
たとえば、法定相続人の数が3人なら、4,800万円が基礎控除額です。相続する遺産の合計額が4,800万円以下であれば、原則、相続税の申告・納付は必要ありません。

以下の「相続税かかる?かからない?-相続税の基本の「き」-」も参照
特例を使った結果、相続税が0円になる場合
相続税には、基礎控除以外にも、特定の相続人が対象となる税額控除や特例が存在します。たとえば、
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
を使った結果、相続税が0円になるケースがあります。
ただし、これらの特例は、相続税申告書に必要事項を記載した上、一定の書類を添付するなどの手続が必要になります。
なお、配偶者の税額軽減によって一次相続の税額を抑えられても、その後の二次相続まで考える必要があります。

以下の「相続は二次相続まで考えた方がいい?-後で後悔しないための基本-」も参照
相続でまずかかるのが戸籍などの書類取得費用
相続の手続きで必要となる費用が、戸籍謄本などの書類の取得費用です。
相続人を確認するために戸籍が必要
相続人が誰か?を確認するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本を取得する必要があります。
戸籍謄本は450円、除籍謄本は750円とそれほど高額ではありません。しかし、何通も戸籍謄本等を取得すると、それなりの金額になります。
法定相続情報証明制度を使う
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得して、法務局に法定相続情報一覧図を提出すれば、登記官の認証を受けた一覧図の写しを無料で取得できます。
この法定相続情報証明書は、銀行や不動産登記などの手続きで相続人であることを証明する資料として利用できます。名義変更の都度、被相続人の戸籍謄本等を提出する必要はなくなります。
不動産を相続すると登録免許税がかかる
相続税がかからない相続でも、遺産に不動産がある場合は費用がかかります。
相続税が0円でも登録免許税は必要
不動産の相続登記をする際に、固定資産税評価額×0.4%の登録免許税を支払う必要があります。たとえば、土地・建物の固定資産税評価額が合計2,500万円の場合、登録免許税として10万円の支払いが必要です。
なお、一定の場合には免税措置があります。制度は変更されることがあるため、登記時点の制度を確認してください。
相続登記を「後回し」しにくい
2024年4月から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に、相続登記の申請が必要です。正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

相続登記の義務化については、以下の記事参照
したがって、売る予定がないから名義変更しなくてもいいというわけにはいきません。
専門家に依頼すれば報酬の支払いが必要
相続の各種手続きを専門家に依頼すれば、専門家に対する報酬を支払うことになります。
司法書士
主に、不動産を相続した場合に、登記手続きを依頼することになります。
税理士
相続財産の評価、相続税の申告を依頼することになります。
小規模宅地等の特例などを利用して相続税が0円になる場合も相続税の申告は必要です。相続税は0円でも税理士に依頼することになるでしょう。
弁護士
- 遺産分割について揉めている
- 相続人と連絡が取れない
- 遺留分の問題がある
といった場合は、弁護士に依頼することになるでしょう。
相続人同士でもめると裁判所の費用もかかる
相続人の間でもめて、遺産分割がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てることになります。他にも、相続人間で争いがあると、調停や訴訟といった裁判手続を利用せざるを得なくなります。
実際には、裁判所へ納める手数料そのものより、資料収集や弁護士への報酬、解決までの時間などの負担が大きくなることがあります。
実家などの不動産は「相続した後」にもお金がかかる
不動産を相続した場合は、相続した後にも費用が必要になります。
不動産を持っているだけでも費用が発生する
不動産を所有している場合、その不動産を有効活用していなくても、
- 固定資産税
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
- 火災保険
- 空き家の管理・修繕費用
- 家財道具の処分費用
といった費用がかかります。これらの費用は、基本的に不動産を所有している限り、必要になる費用です。
不動産を売却するにも費用がかかる
相続した不動産を売却する場合、
- 仲介手数料
- 測量費用
- 建物の解体費用
- 家財道具の処分費用
- 登記関係費用
などの費用がかかることがあります。
また、相続税がかからなかった不動産でも、売却すると所得税がかかる場合があります
葬儀などのお金も必要になる
厳密には、相続手続そのものの費用ではありませんが、死亡前後にはまとまった支出が生じることがあります。たとえば、
- 葬儀費用
- 納骨の費用
- お寺への読経料
などの費用が必要になります。
ちなみに、葬儀費用は、相続税の計算上、遺産総額から控除できます。ただし、香典返し、墓石・墓地の購入、初七日などの法事費用などは、控除できません。
相続税0円でも、こんな費用がかかる
モデルケース
父親が死亡。
相続人は、母と子の2人
相続財産は、預貯金1,000万円と自宅不動産2,500万円
※説明を分かりやすくするため、自宅不動産は相続税評価額・固定資産評価額とも2,500万円とする
法定相続人の数は、2人なので、相続税の基礎控除額は4,200万円です。相続財産の評価額は合計3,500万円です。したがって、このケースでは、相続税は0円です。
自宅不動産を相続すると、2,500万円×0.4%=10万円の登録免許税がかかります。その他に、戸籍謄本等の取得費用、司法書士への報酬、今後の不動産の維持・管理費が必要です。
つまり、相続税が0円だから、お金の準備は必要ないとはならないのです。
相続では「遺産の額」だけでなく「すぐ使えるお金」を確認する
相続では、遺産の金額に目が行きがちです。しかし、「3,000万円の家を相続する」のと「3,000万円の現金を相続する」のは、まったく違います。
3,000万円の家を相続する場合、登録免許税や司法書士報酬、家財処分費用を相続した家から支払うことはできません。つまり、資産はあるのに、手元のお金がないという事態に陥ることがあります。
相続では「いくら相続するか」だけでなく、「手続や管理のために現金をいくら用意しておく必要があるか」というキャッシュフローの視点も大切です。
特に、遺産の大半が不動産の場合は、相続税の有無とは別に、相続後の維持費や売却まで含めて考える必要があります。

不動産の相続に関して、以下の各記事も参照
相続した実家をどうする?住む・売る・貸す・共有する前に考えること
親が住んでいた実家を相続する場合、住む・売る・貸す・共有するなどの選択肢があります。空き家のまま放置したり、とりあえず共有にしたりすると、後でトラブルになることもあります。相続した実家をどうするか決める前に確認しておきたいポイントを解説します。
負動産とは?相続した売れない土地・空き家の処分方法と相続放棄の注意点
相続した土地や空き家が売れず、管理費や固定資産税だけがかかる「負動産」。処分方法、相続放棄の注意点、相続財産清算人、相続土地国庫帰属制度について解説します。
相続で費用が膨らみやすいケース
- 相続人が多い
- 代襲相続などで戸籍収集が複雑
- 遺産に不動産が複数ある
- 遺産に遠方の不動産がある
- 空き家を相続する
- 相続人同士で話合いがまとまらない
- 相続税の特例を使う必要がある
などのケースでは、相続に関する費用が多くなることがあります。
「遺産はそれほど多くないから大丈夫」と思っていても、相続関係や遺産の内容によって、相続の手続の負担は変わります。
「相続税が0円」と「相続にお金がかからない」は別
相続税がかからなくても、戸籍謄本等の取得・相続登記・専門家への依頼などに費用がかかることがあります。また、小規模宅地等の特例等を使った結果、相続税が0円になる場合は、相続税申告が必要なケースがあり、税理士に依頼する必要があることがあります。
特に、不動産を相続する場合は、相続時の費用だけでなく、その後の維持・処分費用まで考えておくことが重要です。

相続税がかからないからって、全部タダになるわけじゃないんだね。

そうだね。特に不動産があると、登記やその後の管理にもお金がかかるから、「税金があるかどうか」だけで考えないほうがいいよ。

じゃあ、相続する財産と一緒に、必要になるお金も確認しておくのが大事なんだ。

うん。手続や遺産分割に迷うことがあれば、早めに専門家に相談して整理しておくと安心だね。
相続では、相続税がかかるかどうかだけでなく、「誰が何を相続するのか」「不動産をどうするのか」「手続にどのくらい費用がかかるのか」まで考えておく必要があります。
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